<あらすじ>
中学二年生の椎名和歌子(シーナ)は、在学中に引越しをせいたせいで、遠方から電車通学をしているのだが、ある朝、他クラスの担任教師である河野先生と、偶然同じ車両に乗り合わせる。
車で事故を起こし、電車通勤を余儀なくされている河野先生とシーナは、しばらくの間、毎朝一緒に学校へ通うことになるのだが――。
これぞ、THE少女漫画、といった感じの作品です。
オトメの夢「教師と生徒のラブストーリー」よ~!!
今から思えば、私の「歳の差萌え」は、これから始まったのかもしれません。
なんといっても、河野先生が、カッコいいんだよねぇ。
くらもち作品にはよく出てくるタイプのキャラです。「東京のカサノバ」の暁とか、「アンコールが3回」の不破とか、そういうマイルドな系統。
何か説明しがたい不思議な魅力があるんですよね。ひょうひょうとしているようで、焦ったり、怒ったり、格好悪いところもちゃんとある。でも、全体的な印象としては、欠点がない……といった感じで。
やはり、上手く説明できません。
とにかく、女にとっては相当理想的な男性像であることは確かです。
こんな人、滅多にいませんが、昔、私の職場の先輩に奇跡的にそっくりな雰囲気の人がいました。二枚目ってわけじゃないんだけど、ちょっとした態度や仕草、口調が妙にかっこいいという人が。(キザとは違います)
くらもち先生は、そういう男の人を描くのが上手い!それに、相手となる女の子もちゃんと魅力がある。
主役の少女が、ちょっと引っ込み思案というパターンも、くらもち作品では多いです。
可愛いんだけど、ブリッコとは違う、等身大の素直な女の子の良さというのが、出てます。
しかし、正直なところ、河野先生よりもだいぶ年上になってしまった今、改めて読むと「いかがなもんかねぇ」という感想を抱かないでもない…。
教師が十五歳の女の子とできちゃうなんて、実際にあったら、とても素直に祝福できない、難しい話になっちゃいますよ。
だからやっぱり、河野先生は、本当は大人になりきれてなくて、まだまだ青い未熟なところのある人なんですね。
彼の、そういういい加減だったり、定まりきれてない気持ちも、漫画の中ではちゃんと描かれているので、作品として隙はありません。
そういうところもひっくるめて見た場合、単なるハッピーエンドではない、ほろ苦い側面もあって、奥が深いなあ、青春漫画としてよくできてるなあ、と思います。
<あらすじ>
地球の衛星軌道上に浮かぶ巨大な博物館「アフロディーテ」を舞台に、芸術にまつわる人間の心の物語が描かれる。
素晴らしい作品だというのは分かるのだが、私にはどうやら合わないようで、途中で飽きてしまった。
ギリシャ神話由来の単語や、詳細には理解しがたい科学的な言葉で彩られた文章は魅力的だし、話の内容も、人情話的な趣があり、ちょっとした謎解きも用意されていて、良くできている。
多分、私がハマれなかったのは、登場人物の心理が感情的に描かれすぎているように感じたからだと思う。
この本は、センチメンタルな味わいを楽しむ類の小説だと思うので、人物の心理を掘り下げるのは良いのだが、それなら、文章の視点の主である男性は、(表層だけでもいいから)もっと冷徹な目を持つ人間にしてほしかった。
主役の感情が地の文にも入り込むせいで、なんだか小説全体が情緒不安定に陥っているように思えて、読んでいる私としては、イライラしてしまった。
「世界中の美が集まる惑星」という夢のような設定が用意されているのなら、もっと高い場所から、私はその世界を眺めてみたかった。
でも、これは好みの問題だろう。人間の心のありようを詳細に説明されるのが、私は元々あまり好きじゃないので。
この本が、良い作品だというのに異存はありません。
(表題作「人生は野菜スープ」のあらすじ)
無職の志郎と娼婦の美恵子は、ふとしたことから映画館で知り合う。
付き合ううちに、志郎は美恵子の住まいで暮らすようになり、ヒモのような状態になる。
ある日の何気ない会話の中で、志郎が百万円を貯めてみたいということを言うと、美恵子は自分ならすぐに貯められると言い出し、仕事に精を出し始める。
今日はこれだけ稼いだ、今日はあまり稼げなかった、と言いつつ、二人の生活は過ぎていったのだが…。
一年くらい前に初めて読んで以来、大好きな片岡義男の短編集です。
この人の話って、特別事件が起きるわけでもなく、目を瞠るようなオチがあるわけでもなく、至極淡々と時間の流れを描くだけなのだけど、すごく魅力があります。
読むたびにすごいと思うのはその独特な文体です。
人物の感情や心情は、直接的に書かれず、「悲しい」やら「悔しい」「愛しい」などという表現はほぼ出てきません。しかし、人物の行動と風景の詳細な描写で、その人物の感情が滲み出るように、読者に伝わってきます。
あまり饒舌に語られると、人間というものは疑心を抱くものですが、片岡義男は、人物の具体的なアクションによって、気持ちを語るので、スッと心に入ってきますし、より深く理解もできます。
表題作も、一見すると、妙にあっさりとした付き合いの男女のように思えますが、彼らが起こす行動の一つ一つをしっかり追いかけると、二人の間には確かな愛情が存在していることが分かるのです。
もっと、評価されていい人だと思うんですけどねぇ……。
村上春樹と文体が似てると言われるらしいけど、私個人の感想としては、片岡義男の、地に足がついた感じの話の方が好感持てるし、面白いんだけどな!
特に、給料日は傑作です。主人公の行動の理由も意味も分からないのに、とりつかれたように最後まであっという間に読んでしまった。
広告代理店に勤める和夫は、上司とトラブルを起こし、芸能マネージメント部門に左遷されてしまう。
そこで彼が付き人としてつくことになったのは、スターウォッチャーなる肩書きを持つ、星園という気障な男だった。
星園は頭が切れ、初対面の席で和夫に見事な推理を披露する。
初めて顔を合わせた翌日、星園は仕事で秩父の山荘へと招かれ、和夫もそれに付いていく。
しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、不可解な連続殺人事件だった――。
<以下、ネタバレ記述があるのでご注意を>
読後に、もやもやとしたものが残る話。多分、推理小説としては、よくできてる。でも面白くない。
え~、やっぱりそうなっちゃうの?
真相が明らかになったとき、私はそんなことを思い、がっかりした。
まさか、そういうオチじゃないよね。こんなところで騙さないよね……。
と、読みながら懸念していたことが、事実になってしまったからだ。
読者への挑戦……と見せかけて、そこに細工をしかけるのはないわー。
(おまけに分かり易すぎ)
フェアではありますけどね。嘘は言ってないけど。
シークエンスごとの注意書きは、要らなかったような気がします。
まあ、結局のところ、読者の信頼を引き付けておいて騙すようなことをするのなら、もう少し後味良くしてほしいです。
犯人の豹変振りも、私にはなんか気分悪かったです。
初めの方で出てきた打ち開け話は本当だったのか、嘘だったのか、その辺のところが曖昧なままなのも、気になるし。
最後のご都合主義的な大団円が、馬鹿馬鹿しくて笑えたのが、まだ救いでしょうか。
ニューヨークでダンサーをしているアートは、車の運転中、道路に飛び出してきた少年を避けようとして、事故を起こしてしまう。
病院のベッドで目覚めたアートだったが、そこには事故の原因となった少年もいた。
少年に怪我はなかったが、事故に巻き込まれたショックのせいか、それまでの記憶を無くしており、アートはやむなく彼を保護する羽目になる。
アートは少年にジミーという名前をつけて弟のように可愛がるが、実はジミーは月からやってきた人魚であり、いずれは女性化して子供を生まなくてはならないのだった。
ジミーはやがてアートに想いを寄せるようになるが、アートは全く気が付かない。
そんなジミーの前に、母親の元婚約者の息子という人魚が現れて……さあ、どうなる!?
そんなこんなで幕が開き、最終的に物語はチェルノブイリ原発で事故が起こるかどうか、という話になる。
いやいや、大事なのは、ジミーとアートの愛の行方なわけですが。
今から思えば、この漫画を描いてたときが、清水玲子の一番いいときだったんじゃないか。
絵の出来なんか、完璧っつーくらいに美しいし。
最近あんまり読んでないけど、輝夜姫になると、なんかキャラが肉感的になりすぎちゃって、どうもなー。
それはさておき。
笑いもあり、サスペンスの要素もあり、でも、本筋は正統派のラブストーリーっていうところがイカス。
なんたって主人公は人魚だもの。そして、相手の男は売れないダンサーだもの。舞台はニューヨーク。
ロマンチックすぎる……。
読んでいた当時、私が萌え死んだのも、無理はなかったのである。